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神戸地方裁判所 昭和55年(ワ)667号 判決

原告 平野千代子

〈ほか二名〉

右三名訴訟代理人弁護士 高橋敬

被告 川西港運株式会社 (旧商号 大和運輸作業株式会社)

右代表者代表取締役 牧野慎三

右訴訟代理人弁護士 鳥巣新一

右同 野中英世

主文

一  被告は原告らに対し、各金一四二万七〇七七円宛及びこれに対する昭和五五年七月四日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その一を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告らの請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、各金五五〇万円宛及びこれに対する昭和五五年七月四日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告の答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  原告らの請求原因

1  (当事者の地位)

原告平野千代子は、訴外平野光三(昭和五年九月三日生。以下「光三」という。)の妻、原告平野信行は光三の長男、原告平野清は光三の次男であり、原告ら三名は光三の死亡により、相続分各三分の一ずつの割合で同人を相続した。

被告は神戸港で港湾運送事業の沿岸荷役事業及び倉庫荷役事業を業とする会社である。

2  (雇用契約の成立とその内容)

光三は昭和二四年一月から被告に雇用され、昭和三五年頃からフォークリフトに乗務し始めて以来、死亡するまでの間、フォークリフトの運転業務に従事していた。

3  (光三の死亡と死因)

光三は、昭和五四年一月二五日午後四時過ぎ、被告の兵庫突堤寄場において脳内出血の発作をおこし、神戸市兵庫区新開地吉田病院へ収容されたが、同月二九日午前六時二〇分頃、高血圧性脳内出血に因り死亡した。

光三は昭和五〇年頃から高血圧症を発症するに至り、以来被告の行なう定期健康診断でも血圧の数値が最高で一八六ないし二一〇、最低で一一五ないし一二〇の間にあり、高血圧症で要治療状態であるとの診断がなされていて、被告は、この事実を嘱託医から知らされ熟知していた。光三の死亡は、この高血圧症を直接の原因とするものである。

4  (被告の責任)

(一) 雇用契約において、使用者は、労働者が労務に服する過程において生じうる危険から労働者の生命・身体・健康を保護するために配慮すべき義務を負う(以下、安全配慮義務という。)。被告は前記のとおり光三の高血圧症を知悉していたのであるから、右症状の増悪を抑制、回避するため就労制限、就業指導、生活指導等の適切な措置をとるべき安全配慮義務があった。しかるに、被告は次に述べる通り右配慮義務を懈怠して、光三の高血圧症を増悪させた。

(1) フォークリフトの運転は、前後左右を絶えず注意し、前進後退を繰返えさねばならず、そのため運転者に体をねじったり、腰をまげるなどの不自然な姿勢を強い、また運転中、腰部に継続的でかつ大きな振動を受けるので、肩、腕、腰に荷重がかかるほかストレス性の消化器障害もひきおこし、いわゆる「フォークリフト病」として注目されているところであり、荷崩れその他のトラブルの処理作業もあるため肉体的に重激であるうえ、交通整理の行なわれていない港湾公共埠頭において他の大型運搬車両にも注意をはらわなければならないため、フォークリフトの運転は精神的にも負担が大きく、著しい全身疲労をもたらす労務であり、一日二、三時間が健康保持のためには限度であるのに、被告は、光三に月三〇時間の残業を含め、他のフォークリフト運転者に比し抜群に大きい作業量を課し、長時間フォークリフト運転業務に従事させ続け、作業の転換や労働時間の短縮等の措置を何ら講じなかった。

(2) 高血圧症の治療には食事療法による摂取カロリー制限やアルコール飲料の制限などの生活規制を必要とするのであるから、被告としてはかねてから酒好きである光三に対し節酒を勧告するなどの生活指導上の配慮をすべきであるのに、かえって被告は兵庫突堤寄場において、連日のように、勤務終了後光三ら従業員に酒をふるまっていた。

(3) 脳出血の発作初期段階においては、絶対安静が必要であるから、被告としては、光三に対し、倒れた位置において、枕はなるべく低く大きなものを用い、うすい布団をかけ、上肢は肘関節を軽く屈曲したまま身体側におき、上肢の下にはクッションをおき、手にはタオルをまいて握らせ、肩関節の下には小さい枕をおいて関節脱臼を防ぎ、下肢は砂のうを用いて外旋、外転位に陥らないようにするなどの措置をとったうえ、医師の診断を待つことにより、発作の増悪を抑制、回避し、生命の危険が生じないよう配慮すべきであるのに、光三が寄場で脳出血発作で倒れた際、被告の履行補助者である従業員漣らは、光三がコップを落したり、けいれんをおこすなど異状を示しているのに気付きながら、同人を立たせて寄場の二階へ階段を上らせたうえ、暖房の入っていない二階に、救急車で吉田病院に運び込むまでの間放置するなど一層発作を増悪させるべき行為をなした。

(二) 光三の死亡は、被告の右(1)(2)(3)の安全配慮義務違反行為による高血圧症の増悪を原因とするものであり、右(1)(2)(3)の各行為と光三の死亡の結果生じた損害との間にはそれぞれ相当因果関係があるものというべきである。したがって、被告は原告らに対し、債務不履行に基づき光三の被った損害を賠償すべき責任がある。

5  (損害)

(一) 逸失利益

光三は死亡当時満四八才であり、満六七才までの一九年間就労が可能であって、昭和五三年における平均月収は金三二万六二八〇円であるから、これを基礎とし、そこから生活費三〇パーセントを控除し、さらにホフマン式計算方法により中間利息を控除すると、光三の逸失利益の現在の価額は金五〇九四万七七〇二円(円未満切捨)となる(但し、金三五九四万七七〇三円の誤記である)。

326,280(年収)×12×(1-0.3)(生活費控除)×13.116(中間利息控除)=50,947,702

(35,947,703)

(二) 慰藉料

光三が死亡により被った精神的苦痛に対する慰藉料は、前記諸般の事情によれば、金一五〇〇万円とするのが相当である。

(三) 相続

原告らは、光三の共同相続人として、右各損害賠償債権を各金二一九八万二五六七円宛相続した。

6  (結論)

よって、原告らは被告に対し、債務不履行に基づく右損害賠償金の一部として各金五五〇万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五五年七月四日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因1ないし3の事実は認める。

2  請求原因4(一)(1)の事実は否認する。

フォークリフトは走行速度が遅く、また近時車体も改良されて運転者の身体に与える影響は改善されており、その運転業務は決して重激とは言えない。特に、光三が昭和五〇年ころから従事していた出庫作業は、倉庫内の貨物を引取りにきたトラックまで運搬するだけなので、走行距離も一〇ないし二〇メートル程度の短距離であり、被告の作業のうち最も軽度の労務である。荷崩れが起こることはほとんどなく、まれにあっても重量物は他の作業員が処理するから、運転者に過重な負担をかけることはない。また、被告は光三の休憩・休暇の申出を拒否したことはなく、残業を強要したこともない。

3  請求原因4(一)(2)の事実のうち、光三が酒好きであったこと、兵庫突堤寄場において全作業終了後従業員に酒をふるまうことがあったことは認めるが、その余は否認する。従業員に酒をふるまうのは、お祭など特別な日であって、その回数は年に一、二回にすぎず、原告らの主張するように連日「ふるまい酒」を出した事実はない。

4  請求原因4(一)(3)の事実のうち、従業員である漣らが光三を二階へ上らせたこと、二階に暖房のないことは認め、その余は否認する。

原告主張のごとき義務は、医学上の専門的な配慮義務であり、一般人の注意義務をはるかに超えるものである。脳卒中の発作という突発的事態が起きた場合、一般人の注意義務としては病人を安静にし寝かせて医師の診断を待つということで足りるものというべきである。また光三を二階へ上らせたのも畳敷きの二階で光三を静かに寝かせるためであったし、二階は一階のストーブの暖房で暖かかった。したがって、被告従業員らがとった措置には何ら落度はない。

6  請求原因4(二)は争う。

光三の死は、高血圧症で要治療状態にあると知りながら自ら治療を受けようとせず過度の飲酒を続けた光三自身の不治療、不養生を原因とするものであり、被告が光三の死に対して責任を負ういわれはない。

6  請求原因5の事実のうち、光三の年令及び昭和五三年の平均月収は認めるが、その余は否認する。

三  被告の抗弁(過失相殺)

光三は、自己が高血圧症で要治療状態であることを知りながら、従来何らの治療も受けなかったばかりか、飲酒を続けて、右症状を自ら増悪させていた。

また、被告の「ふるまい酒」は何人にも飲酒を強制するものではなかったのであるから、光三は自らの健康状態を考慮して飲酒を慎しむべきであったのに、軽卒に「ふるまい酒」に応じて飲酒したものである。

四  抗弁に対する原告らの認否

抗弁事実は否認する。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

二  被告の安全配慮について

一般に雇用契約においては、使用者は労働者に対して、報酬支払の義務を負うほか、労働の場所・手段等を提供するに伴い、その一般的前提として労働が安全及び衛生の保持された状態の下で行なわれるように配慮し、労働者の生命・健康を危険から保護すべき義務を負うものであるが、この安全配慮義務は、労働安全衛生法等の法令に根拠を有する場合に限定されず、雇用契約に付随する当事者間の信義則上の義務として認められるものであるから、その具体的内容は当該労働環境や労働者個々の事情に応じて決せられるべきである。

そして被告は、医師による健康診断の結果光三が高血圧症で要治療状態にあることを知っていたのであるから、労働過程において同人の右症状を増悪させないよう、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、節酒を勧告するなど生活指導上の配慮をすべき義務があったものというべきである。

三  請求原因4(一)(1)(光三をフォークリフト運転業務に従事させたこと)について

《証拠省略》を総合すれば、被告の現業従業員は現場監督・倉持ち(倉庫内の荷物の管理)・フォークリフト運転手・作業員の四種類の職種に分類されること、光三は昭和四五年ころからフォークリフトの運転のみに従事し昭和五〇年ころから出庫係になったこと、フォークリフトの運転は手鉤で貨物を積み上げる作業員の仕事に比べると、単純に筋肉労働として見た場合には激しい重筋肉労働であるとはいえないこと、近時フォークリフトの車体も改良され運転者の身体に与える振動等の影響も若干は改善されていることを認めることができる。

しかしながら、《証拠省略》を総合すれば、フォークリフトの運転は、フォークに貨物を載せた状態では、前方が見えないため後進走行せざるを得ず、後方の安全確認のため運転者に体をねじるなどの不自然な姿勢を強いること、フォークを上下動させるレバーを極めて多数回操作せねばならないこと、フォークリフトの車体の構造が、なお運転者の保護に充分でなく、腰部、脚部にエンジンの振動を直接受けること、右の諸点が原因となって近時フォークリフト運転者間に腰痛、頸肩腕症候群、ひざ関節痛、下肢の神経痛、胃腸病等の症状を訴える者が多く、フォークリフト病と称されるに至っていること、したがって、フォークリフト運転作業の方が、身体に及ぼす影響という点からみれば、手鉤を用いる単純筋肉労働よりむしろ重激なものといえること、高血圧症の者が過重な責任負担のある労働、長時間労働、深夜労働、高密度の労働、激しい重筋肉労働のいずれかに従事する場合、脳出血等の急性循環器障害により急死する危険性が大きいこと、しかるに被告は光三の労働時間を短縮するなどの措置を講じることなく、同人を高血圧症でない他のフォークリフト運転者と全く同一時間就労させたこと、また被告は光三を他の倉庫に比し群を抜いて貨物取扱量の多いR1、R2番各倉庫に配置したため、同人は常に他のフォークリフト運転者よりもはるかに多量の貨物を運搬していたこと、したがって、光三の作業が倉庫内の貨物を倉庫付近のトラックまで運搬するものであって、他の場所に配置されたフォークリフト運転者よりも走行距離が短かかったことを考慮しても、光三は他のフォークリフト運転者よりも、連日かなり高密度な労働に従事していたものであることを認めることができる。

《証拠判断省略》

そして、被告は、経験則に照らし、健康体の者と同一の長期間でかつ高密度の労働の継続が光三の高血圧症を増悪させ、脳出血による死亡の結果をも惹起し得るということは、十分予見することが可能であったものというべきである。

しかるに、被告は、光三に対し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を何らとることなく、同人に健康体の者と同一の長時間でかつ高密度な労働を長期間にわたって継続させたものであって、右のごときは、高血圧症の従業員である光三に対する使用者としての安全配慮を全く欠如していたものといわねばならない。

四  請求原因4(一)(2)(光三ら従業員に「ふるまい酒」を供していたこと)について

《証拠省略》によれば、飲酒が高血圧症を増悪させるものであることが認められる。

被告が勤務終了後寄場で従業員に酒を供することがあったとの事実については当事者間に争いがなく、《証拠省略》を総合すると、毎日とはいかないまでも仕事量の比較的多い日などは連日のようにかなりの頻度で「ふるまい酒」が供されていた事実を認めることができる。この点について、証人上村幸作は「月に一回位」と、また証人魚住等は「年末・年始・十日戎の時に限る。作業のはかどった日に酒をふるまうことはない。」とそれぞれ証言するけれども、右各証言は、光三が倒れた一月二五日が何ら特別の日でないという事実(この事実は《証拠省略》によって認められる。)に照らして、たやすく信用することができず、その他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

そして、被告は、経験則に照らし、飲酒が光三の高血圧症を増悪させ、脳出血による死亡の結果をも惹起し得ること及び酒好きの光三に「ふるまい酒」を供すれば同人が飲酒することは十分予見することが可能であったというべきである。

しかるに被告は、光三に対して飲酒をしないよう生活上の指導をしなかったばかりか、逆に職場である寄場で、高血圧症の者も含めた全作業員に対し、作業終了の直後に連日のように「ふるまい酒」を供していたものであって、被告は、その点においても、高血圧症の従業員である光三に対する使用者としての安全配慮を全く欠如していたものといわざるを得ない。

五  請求原因4(一)(3)(脳出血発作後の措置)について

従業員漣が光三を寄場の二階へ上らせ、同所に寝かせていた事実は当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、光三は発作を起こして倒れはしたものの、二階へ上る際には両側から支えられながら自分で歩けたこと、吉田病院に着いてからもなお意識があったことの各事実が認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

そうすると、かかる状況の下で、漣らが光三をとりあえず畳のある二階に寝かせて様子を見た措置は、一般人のとるべき注意義務に照らせば相当なものであったというべきであり、これをもって被告の履行補助者による安全配慮義務違反行為であるということはできない。原告主張のごとき注意義務は、医師等に要求すべきものであって、一般人に対しこれと同等の注意義務を課することは許されないものというべきである。

六  被告の安全配慮義務違反の寄与度について

右四、五に認定の各事実によれば、被告が光三をフォークリフト運転業務に従事させたこと及び光三に「ふるまい酒」を供していたことと光三の死亡の結果生じた損害との間には、それぞれ相当因果関係が存するものというべきである。

しかしながら、光三の高血圧症が、要治療状態になって既に数年を経過していたものであることは、前叙のとおりであり、また《証拠省略》を総合すると、光三の飲酒は必ずしも勤務終了後の「ふるまい酒」だけではなかったこと、「ふるまい酒」は従業員一人当たり一、二合程度であったことが認められる。

そうすると、本件においては、光三をフォークリフト運転業務に従事させたこと及び「ふるまい酒」を供したことの光三の死亡という結果発生に対する各寄与度は、合計しても五〇パーセントを越えないものと認めるのが相当である。

七  請求原因5(損害)について

光三の年齢及び平均月収は当事者間に争いがない。そうすると光三は満六七才まで今後一九年間稼働することが可能であり、その間三二万六二八〇円と同額の見収を得るものと認められる。そして生活費は原告清、同信行の年齢を考慮すると、収入の四〇パーセントとするのが相当であるからこれを控除し、さらにホフマン式計算方法により中間利息を控除して算定した光三の逸失利益の現在の価額は金三〇八一万二三一七円である。

326,280(年収)×12×(1-0.4)(生活費控除)×13.116(中間利息控除)=30,812,317(円未満切捨)

前記認定の諸事実その他諸般の事情を斟酌して考察すると、光三が死亡により被った精神的苦痛に対する慰藉料は金一二〇〇万円が相当と認められる。

八  抗弁(過失相殺)について

《証拠省略》によれば、光三は、健康診断の結果、自己が高血圧症で要治療状態にあることを知りながら、従来家人にもこれを秘し、何らの治療も受けなかったばかりか、さらに飲酒を続けて、右症状を自ら増悪させていたものであることが認められる。

また《証拠省略》によれば、「ふるまい酒」が供される時も飲酒が強要される訳ではなく、酒を飲まずに帰る従業員もいたことが認められ、「ふるまい酒」は、何ら光三に飲酒を事実上強制するものではなかったのであるから、光三としては自身の健康を考慮して当然飲酒を控えるべきであった。

以上の諸点を考慮すると、本件における光三の過失割合は相当に大きいものというべく、本件の結果発生については、同人に八割の過失があったものと認めるのが相当である。

九  損害からの控除

右六及び八に述べたとおり、被告の責任を減額させるのを相当とする事情として、寄与度減額(五割控除)と過失相殺(八割控除)の各事由が認められ、右各事由はそれぞれその根拠を異にするものであるから、七で認定した損害額から順次控除の操作をして算定すると、被告の負うべき責任額は、金四二八万一二三一円となる。

42,812,317×(1-0.5)×(1-0.8)=4,281,231(円未満切捨)

そうすると、原告ら三名の相続分については当事者間に争いがないから、原告ら三名は、光三の被告に対する右損害賠償請求権を、各三分の一にあたる金一四二万七〇七七円宛相続により承継取得したものというべきである。

十  結論

以上の次第であって、原告らの被告に対する本訴請求は、各金一四二万七〇七七円宛及びこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和五五年七月四日から各支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山﨑杲)

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